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損害賠償額の基準

賠償額を算出する基準は3種類存在します

損害賠償額は、損害を金銭的に評価して算出するものです。
治療費や交通費は、実際に支出した額が損害額なので、比較的争いが少ないのですが、慰謝料額とか逸失利益の額などは、明確に「何円支出したから、同額が損害」とわかるものではありません。

そこで、実務上は、交通事故の損害賠償額の算出には、ある程度の基準が用意されており、その基準に基づいて損害額が算定されることになります。

ただし、異なる3つの基準が存在するので、注意が必要です。

自賠責基準

自賠責保険(強制保険)は、自動車損害賠償保障法(自賠法)という法律に基づく制度なので、保険金の額も法令等に則って支払われることになります。

そして、自賠法に基づいて、自賠責保険の保険金額の上限(自賠法施行令2条)と、その限度内での金額の算出方法(支払基準)が定められています。

例えば、交通事故によって傷害を負った場合、自賠責から支払われる保険金の上限は、120万円です。
また、死亡事故においても自賠責から支払われる保険金の上限は、3000万円+120万円となっています。
後遺障害についても、例えば14級の場合、逸失利益と後遺障害慰謝料を併せて75万円が上限です。

もちろん、これを超える損害が生じていた場合は、任意保険や相手に直接請求することが可能ですが、どんなに損害が大きくても自賠責からはそれ以上は出してもらえません。

また、自賠責の支払基準では、慰謝料の算定方法も決められています。

自賠責基準における通院慰謝料の算定方法は、「日数 × 4,200円」です。
この「日数」は、治療期間と実通院日数の2倍を比べて少ない方とされています。

例えば、7月1日から8月31日まで(62日間)通院した場合、そのうち実際に病院に行って治療をしたのが20日間なら、20 × 2 < 62なので、慰謝料は、20 × 2 × 4200 = 168000円です。
40日間病院に通ったのであれば、40 × 2 > 62となるので、62 × 4200 = 260400円ということになります。

後遺障害慰謝料は、例えば14級であれば32万円と決まっています。

もっと知りたい!
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裁判基準

自賠責保険から支払われる保険金の額ではなく、裁判所で損害賠償請求をしたときにどの程度の損害賠償が認められるか、という基準が、裁判基準です(弁護士基準ともいいます。)

自賠責基準と違って、そもそも保険金の支払基準ではないので「上限」というものはありません。

また、慰謝料の計算式が自賠責基準とは大きく異なります。

通院期間をベースにする点は共通するのですが、裁判基準では、慰謝料基準表によって算出します。
例えば、むち打ち等の比較的軽い症状で、上記と同じように、7月1日から8月31日まで(62日間)通院した(実通院日数20日)とすれば、だいたい32~36万円程度になります。

後遺障害慰謝料は、等級ごとに定められている点は自賠責基準と共通ですが、額が大きく異なり、裁判基準でいくと14級だと110万円程度です。

見ていただければわかる通り、自賠責基準と裁判基準では、大幅に裁判基準の方が額が大きいのです(同じ実通院日数20日でも、その差は倍です)。

そして、この金額の差は、損害が大きければ大きいほど広がります。

任意保険会社の基準

上記2つの基準のほかに、任意保険会社の社内ルールとしての基準も存在します。

任意保険基準ということもありますが、保険会社ごとにどれくらい支払ってくれるかの基準であって、共通した決まりがあるわけではありません(昔は、基準が存在しました)。

保険会社が、裁判基準で支払ってくれれば丸く収まるところですが、保険会社は商売でやっていますので、一般的に任意保険基準は、裁判基準より低額になっています。
自賠責基準をベースにして、少し上乗せしたぐらいの額が提示されることが多いです。

しかし、保険会社は、わざわざ「裁判になれば100万円くらいの賠償が認められるでしょうが、今回は50万円で示談しましょう」のように説明してはくれません。

「当社は50万円支払います。これで決着にしましょう。書類にサインして返送してくれたら振り込みます」といった書面が送られてきます。

もちろん、相手方の保険会社が提示した額に納得できればそれで示談すればいいのですが、相手が提示する額は、必ずしも損害賠償額として妥当な金額とは限らない(大部分において低額である)ということを覚えておくとよいでしょう。

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