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後見人の監督体制

成年後見制度を利用し、後見人等が就任すると、預金通帳や土地の権利書等の重要な財産を後見人が管理することになります(保佐や補助の場合は部分的です)。

しかし残念なことに、この制度を悪用して「後見人が本人の財産を着服した」というようなニュースを目にすることもあり、「本当に大丈夫だろうか」と心配される方も多いのではないでしょうか。

最終的には後見人となる人の資質の問題にもなるのですが、後見人の不正を防止する仕組みがいくつも存在しますので、それをご紹介いたします。

家庭裁判所

後見人は、選任された後は自由にできるのではありません。
管轄の家庭裁判所が後見人を監督しており、後見人は半年~1年程度に1回、家庭裁判所に管理する財産や生活状況等について定期的な報告をしなければなりません。
また、特別な事情があれば、適宜裁判所に報告や相談をしたり、裁判所から指示を受けることもあります。

裁判所にきちんと報告をするためには、常日頃から帳簿や業務日誌等を作成しておく必要があります。
もし報告を怠ったり、指示に従わないなど、後見人としての適正に欠けると裁判所が判断した場合は、後見人を解任することができます。

「成年後見監督処分事件」とは?

特に親族が後見人となっている場合において、裁判所から業務報告を求める手紙が届くことがあります。
そこには、「成年後見監督処分事件」のような表題が書かれており、「何で私が処分されるの?」「事件になるようなことは何もしていない」と驚かれる方もいるようです。

法律用語では、「処分」という言葉は、「処罰」とは全く関係なく、公権力(ここでは裁判所の権限)の行使に対して一般的に使われる用語です。
つまり、必ずしも漠然とイメージされるような「制裁」の意味はないのです(実は、通常の日本語の意味としても、「処分」は常に「処罰」を意味するわけではありません)。

民法には、「家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる」(863条2項)と規定されていますので、条文上の文言が使われているに過ぎないと考えてください。

また、「事件」という用語も、ニュース等の使われ方(「事故」の対義語のように使われている)を見ていると、犯罪とか不正とかのイメージがあるかもしれませんが、これも全くそのような意味は持ちません。
そうではなく、裁判所で扱われる、それぞれの具体的なケースや案件のことを「事件」といいます。
誰かを訴えても、調停を申し立てても、相続放棄をしても、成年後見を申し立てても、それぞれが「事件」です。

なので、「成年後見監督処分事件」というのは、「成年後見の業務遂行状況をチェックする手続きの件」くらいの意味になります。
「処分」とか「事件」とかいう言葉で、何か責められているような気がするかもしれませんが、そんなことはありませんので、ご安心ください。

後見監督人

主に親族後見人や、専門職以外の第三者が後見人等に選任される場合、「後見監督人(保佐監督人、補助監督人)」が選任されることがあります。

後見監督人には司法書士等の専門職が選任され、後見人は後見監督人に対して定期的に報告をし、財産管理の状況をチェックを受けなければなりません。
後見監督人は、後見人の財産管理状況等を裁判所に報告しますので、適正に欠ける行動があるような場合は、裁判所が後見人を解任することもあります。

もっと知りたい!
さらに詳しく知りたい方は、こちらのページも併せてどうぞ。

司法書士独自の監督体制

リーガルサポートによる監督

司法書士を中心に構成されている「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」(リーガルサポート)という団体は、成年後見人となる司法書士の育成と監督を行っています。
リーガルサポートが定める研修単位を取得した者のみが、家庭裁判所に提出される「後見人等候補者名簿」に登載され、家庭裁判所から専門職後見人として選任されます。
また、必要単位を常に取得し続けなければ、名簿から除外される仕組みになっています。

リーガルサポート会員である司法書士は、家庭裁判所だけでなく、リーガルサポートへの定期的な報告も義務付けられており、家庭裁判所以上に細かく厳しい管理・監督・指導体制を設けています。
報告を怠ったり、不正が見られた場合は、リーガルサポートからの処分を受け、場合によっては名簿から除外されることもあります。

「リーガルサポート会員で、後見人等候補者名簿に登載されている司法書士」は、厳しい監督の下で後見業務を行っているのです。
もちろん、私も「リーガルサポート会員で、後見人等候補者名簿に登載されている司法書士」ですので、ご安心ください。

司法書士会による監督

司法書士は、必ず司法書士会に所属することが法律で定められています。
私も大阪司法書士会の会員です。

そのため、司法書士が業務をする際は、司法書士会の指導を受けることになります。

家庭裁判所やリーガルサポートと違って、個々の後見業務に対するチェックを行うことはありませんが、不適切な業務を行う司法書士は、司法書士会の綱紀調査の対象となります。

法務局長による監督

司法書士は、各地域の法務局長の監督下にあります。
司法書士による非違行為は、法務局長による懲戒処分の対象となりますので、後見業務で不正は、懲戒を覚悟しなければなりません。
最も重い懲戒処分では、司法書士資格を剥奪されます。

やはり、家庭裁判所やリーガルサポートのように法務局が事前に個別の案件をチェックすることはありませんが、「懲戒権」という強力な権限によって、司法書士の不正を抑止しています。

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