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相続と成年後見

相続が発生した場合、相続人が1人しかいない場合や包括的な遺言がある場合等を除いて、相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
遺産分割協議に基づき、相続人の誰がどの財産を取得するのかを具体的に決める必要があります。

ところが、超高齢社会の日本では、相続人自身が高齢で認知症を患っていることも少なくありません。
また、若い方であっても、知的障がいや精神障がいをお持ちで適切な判断ができないこともあります。

認知症や障がいの程度が軽度であれば、遺産分割協議で意思表示をすることは可能かもしれませんが、場合によっては裁判所や法務局、金融機関の手続が必要になりますし、取得した財産(しばしば高額になります)を適切に管理することが困難になることもあります。

そういうときに利用できるのが成年後見制度です。

成年後見制度とは何か?

成年後見制度とは、認知症、精神障がい、知的障がいなどのために、判断能力が不十分な方の財産を保護し、生活をサポートする制度です。
具体的には、法定代理人として本人の代わりに法律行為を行ったり場合によっては不適切な契約等を取り消したりすることが認められており、これらの権限を有する支援者(成年後見人等)が本人の預貯金の管理、銀行取引、各種契約の締結や解約、役所の各種手続などを行います。

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相続手続に関して、相続人に成年後見人がついた場合、成年後見人は本人の代わりに(本人の意向に沿いながら)遺産分割協議に参加するほか、亡くなった方に負の遺産が多い場合等は、本人に代わって、家庭裁判所で相続放棄の手続をすることも可能です。

成年後見を利用するための手続

後見人選任までの流れ

相続をきっかけとして成年後見制度を利用する場合、法定後見制度を利用することが多いと思います。
法定後見制度は、管轄の家庭裁判所に後見開始の申立てをし、家庭裁判所が適切な者を後見人等を選任します。
例えば、本人(判断能力が不十分な方)が高槻市にお住まいの場合は、大阪家庭裁判所に申立てをすることになります。

申立てには、申立書を作成し、必要な付属書類・添付書類とともに家庭裁判所に提出する必要があります。
また、申立人や本人、後見人候補者等が裁判所で面談をします。

裁判所が後見人等を選任した場合、選任された後見人等は、財産目録の作成や各種届出等必要な手続を終えれば、本格的に相続手続を開始することになります。

誰が成年後見人になるか

成年後見人には、誰でもなることができ、また、申立て時に候補者を推薦することも可能です。
基本的には、親族か専門職(司法書士、弁護士、社会福祉士)が候補になることが多いですが、特に相続手続を主な動機とする場合は、福祉の専門職である社会福祉士より、法律の専門職である司法書士か弁護士を候補にすると良いでしょう(候補者を推薦せずに申し立てた場合も、司法書士か弁護士が選任される可能性が高いと思われます)。

専門職を候補にする場合や、候補者を出さずに申立てをする場合は問題ありませんが、親族を候補者とする場合は注意すべき点がいくつかあります。
まず、成年後見人を選任するのは家庭裁判所なので、候補者になったからといって必ずその人が選ばれるとは限らないという点です。
あくまでも本人のための後見人ですので、「自分が後見人になれないのであれば、申立てを取り下げる」ということは基本的に認められません。

また、相続手続のために家族の後見人を選任する、という状況ですので、申立人と本人が利益相反関係にある可能性があります。
例えば父が亡くなって母が認知症という場合、申立人(父母の子)と母は、遺産分割に関して利益相反関係にあります。
利益相反関係にある者が後見人等になっても、本人の代理人として遺産分割協議をすることはできませんので、この場合は、特別代理人を選任する等の手続が別途必要になることがあります。

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さらに、相続のために成年後見人を選任するといっても、成年後見人の役割は、相続手続が完了しても終了しません。
成年後見人になる場合は、相続手続完了後も、基本的には本人が亡くなるまで後見事務を継続しなければならないことを理解したうえで候補者になる必要があります。

成年後見人が選任された場合の遺産分割協議

相続分はどうすればよいのか?

成年後見人は、本人の代理人ですから、本人の利益のために行動します。
後見開始の申立てをするのは親族である申立人であっても、後見人となった者は、申立人のためではなく、本人の利益を最優先します。
したがって、基本的には、本人の法定相続分相当額の財産を取得する形での協議を成立させることになります。

もちろん、本人の意思がそれとは異なる場合は、必ずしも法定相続分どおりに財産を取得しないこともありえますが、後見人としては、本人の真意と利益を慎重に見極める必要があります。

誰がハンコを押すのか?

一般的に、遺産分割協議が成立した場合、遺産分割協議書やその他の手続に必要な書類には相続人が押印することになります。
特に、実印の押印と印鑑証明書の添付が必須とされている手続(例えば相続登記等)では、誰が押印するかが問題となります。

成年後見人が本人の代理人として遺産分割協議を行った場合、ここに署名押印するのは成年後見人です。
つまり、「成年後見人の実印」を押印し、必要に応じて「成年後見人の印鑑証明書」を添付します(成年後見人が選任された場合、成年被後見人は、印鑑登録を廃止されることが一般的です)。

なお、保佐や補助の場合において、保佐人・補助人が代理人として協議を成立させるのではなく、あくまでも支援者として関与した場合は、本人の押印・印鑑証明書で足ります。

利益相反の場合はどうなるか?

上記のとおり、本人と後見人が利益相反関係にある場合、後見人が家庭裁判所に申し立てることによって特別代理人が選任されるか、成年後見監督人が選任されます。
そして、選任された特別代理人や成年後見監督人が本人の代理人となり、後見人は、遺産分割の手続については本人の代理人ではなく、あくまでも「相続人の1人」の立場で遺産分割協議をに参加します。

相続と成年後見に関するご相談

当事務所では、高槻市・茨木市・吹田市・摂津市・島本町を中心に、主に大阪家庭裁判所の管轄内で成年後見業務を積極的に行っています。
また、成年後見の申立手続に関しては、大阪府下だけでなく、近隣府県のご依頼もお受けしています。

相続に関する諸手続や、成年後見についてお困りの方は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
初回相談無料です。

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