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遺産分割と債務

亡くなられた方(被相続人)の財産に属した「一切の権利義務」を承継する(包括承継)ので、マイナスの財産である「債務」についても、当然に相続人に引き継がれます。
例えば、被相続人が生前に借りていた借金、滞納していた税金や公共料金、未払のクレジットカード利用代金などが債務になります。

相続人が複数いる場合、相続人全員が債務を承継することになりますが、この債務は、具体的に誰がどれだけ引き受けて弁済をすべきでしょうか。

債務の種類

一身専属の債務

債務の中には、被相続人の一身に専属する債務というものがあります。
例えば、被相続人が何らかの芸術家だったとして、作品を制作する契約を締結して完成させないまま死亡した場合、「作品を制作する債務」は一身専属の債務といえます。 このような、一身専属の債務は、相続の対象となりませんので、誰が引き受けるかを考慮する必要もありません。

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可分債務と不可分債務

債務の種類として、「可分債務」と「不可分債務」があります。
例えば、金銭債務(100万円を支払う債務)のように、数量的に分割することが可能な債務(100万円は50万円と50万円に分割できる)があります。
このような可分債務が複数の債務者に帰属した場合、分割債務となり「それぞれ等しい割合で義務を負う」のが民法の原則です(民法427条)。

相続の場合も、相続人が複数いる場合、相続により当然に相続人間に分割され、それぞれの相続人が法定相続分に応じた割合で債務を引き受けることが原則となります。

他方で、物の引渡債務(生前に売った車を、買主に引き渡す義務)や、移転登記債務(生前に売った不動産の名義を、買主名義に書き換える義務)などは、数量的に分割することはできません。
相続人が2人いるからといって、それぞれが車の半分を引き渡せばよい、というわけにはいきませんので、このような分割できない債務のことを「不可分債務」といいます。

不可分債務は、全員が債務全体を履行する義務を負っており、誰か一人が履行すれば債務が消滅するという関係にあります。

遺産分割における債務の扱い

上記のとおり、遺産分割において問題となる債務は、基本的には可分債務であることが多いといえます。

その可分債務は、相続と同時に当然に相続人全員(なお、相続放棄した人はそもそも相続人になりません)に分割されることになりますので、原則として遺産分割の対象外ということになります。
つまり、遺産分割協議において、不動産や預貯金をどのように分けたとしても、債務については相続人全員が法定相続分に応じて平等に引き受けなければならないことになります。

もっとも、それだと現実的には色々な不都合が出てきます。
例えば、相続人の1人が不動産や預貯金の全てを相続するという遺産分割をした場合、残りの相続人は、プラスの財産は何も引き継げないのに債務だけは引き継ぐことになり、これでは不公平になります。
また、被相続人が事業を行っており、事業に関する財産を後継者が引き継がいだ場合なども、銀行からの借入金については、事業に関与していない相続人も返済しなければならないというのは納得できないでしょう。

そこで実際には、可分債務も含めて遺産分割協議の中で相続人間の負担割合を決める(プラスの財産を多く取得する人は、債務も多く引き受ける)ことができます。
相続人の内部的には、全員の合意によって誰がどれだけ負担するかを決めても何ら問題がありません。
そして、債務引受の場合と同様に、内部的な合意について債権者の同意が得られれば、債権者との関係でも効力を有します。
被相続人の事業に関して借入金などがある場合は、遺産分割の前に債権者ともよく話し合うことが必要になります。

相続放棄をする場合の注意点

債務を引き受けない方法としては、相続放棄をしてしまうという方法もあります。
特に、プラスの財産についても一切取得しないことになっているなら、相続放棄は最も効果的な手段といえます。

しかし、相続放棄をしてしまうと、次順位の相続人に相続権が移る場合があることには注意をしなければなりません。
例えば、相続人が配偶者と子の場合において、財産を全て配偶者に引き継がせようとして子が相続放棄をすると、第一順位相続人がいなくなるため、配偶者だけでなく、被相続人の親や兄弟姉妹が相続人になってしまいます。

事業承継等のため、1人の相続人に相続を集中させようとして、安易に相続放棄をしてしまうと、場合によっては余計に相続関係が複雑化することにもなりかねません。
事業承継の方法や相続放棄については、専門家ともよく話し合うとよいでしょう。

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