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後見登記

家庭裁判所で後見(保佐・補助)開始の審判がなされると、その内容が法務局にある後見登記ファイルに登記されます。

法定後見が開始すると、成年被後見人や被保佐人(被補助人)は、取引や資格に一定の制限を受けます。
どの人に後見等が開始しているかという情報は、どこかに記録しておかなければなりません。
そのための制度が後見登記です。

後見登記とはどんなものか?

後見登記は本人の心情・プライバシーに配慮されています

かつての禁治産者制度では、後見人は本人(禁治産者)の戸籍に記録されていました。
これは、禁治産者制度の利用を躊躇させる一因であったとされています。

現行の成年後見制度では、市町村の戸籍とは全く別に、後見制度の利用に関する事項のみを記録した「後見登記ファイル」を法務局が別途作成し、保管する制度になっています。

登記制度は、一定の事項を公示(一般に開示)する制度ですので、その情報は第三者も見ることが想定されています。
しかし、成年後見制度を利用しているかどうかという情報を、不動産登記や商業登記と同じように、誰でも見れる状態にしておくことは、プライバシーの観点から望ましくありません。

したがって、後見登記は「一般公開」はされておらず、本人や一定の身分関係にある人(配偶者や四親等内の親族、後見人、後見監督人など)のみが、登記事項を記載した「登記事項証明書」の交付を請求することができます。
つまり、後見に関する何らかの証明が欲しい場合は、本人等に登記事項証明書を取得してもらい、本人からその提示を受けるという方法をとることになります。

このように、後見登記は少し特殊であり、また不動産や会社のように大量にあるわけでもないので、後見登記ファイルの作成は東京法務局後見登録課でのみ扱っています。

登記事項証明書

後見登記ファイルに記録されている(記録されていない)事項を証明した書面を「登記事項証明書」といいます。
これには、大きく分けて2種類あります。

まずは、一般に「登記事項証明書」とされる書面。
これは、後見登記記録が存在する人(つまり、成年後見制度を利用している人)に関して、登記事項の内容を証明するものです。

一般的には、成年後見人等が自己の資格、代理権の有無や範囲(保佐や補助の場合)を証明するために利用します。

もうひとつが「登記されていないことの証明書」です。
これは、後見登記に何も登記されていない人が、そのことを証明するために利用します。
誰かと重要な取引関係に入ろうとする人が、その相手方に対して「登記されていないことの証明」の提示を求めることで、取引に問題がない(制限を受けていない)ことを知ることができます。
また、資格制限のある何らかの地位に就く場合に提示を求められることがあります(例えば、司法書士に登録する場合)。

登記事項証明書の交付は、東京法務局後見登録課に郵送請求するか、各地の法務局(地方法務局)の本局で取り扱っています(大阪でいえば、天満橋にある大阪法務局です)。

登記手続

後見開始の登記

後見登記ファイルには、その人に後見開始の審判がなされたときに記録が編成されます。
これは、不動産登記や商業登記のように当事者が申請するのではなく、家庭裁判所の嘱託により登記されます(家事事件手続法116条)。

通常、後見開始の審判が確定(審判から2週間)した後、2週間程度で登記が完了します。
嘱託による登記が完了すれば、登記事項証明書の交付を受けることができるようになります。

また、任意後見の場合は、任意後見契約を締結した段階でその内容が公証人の嘱託により行われ、さらに任意後見契約発効(任意後見監督人の選任審判)の際に家庭裁判所の嘱託により登記されます。

変更登記

最初に作成された登記記録の内容に変更があったときは、変更登記をしなければなりません。
例えば、本人や後見人、後見監督人等の住所や氏名に変更があった場合、後見人等が変更登記申請をする必要があります。

不動産登記や商業登記のように難しい手続きではありませんので、法務局備え付けの登記申請用紙で申請すればよいですが、もし手続きが分からなければ、これも一応「登記手続」ですので登記の専門家である司法書士にご相談ください。

なお、登記事項に変更が生じる場合でも、家庭裁判所の審判による場合(例えば後見人が解任された場合等)は、当事者の申請ではなく家庭裁判所の嘱託により登記されます。

終了登記

本人の死亡によって後見等が終了した場合、終了登記の申請をしなければなりません。
これも、当事者が申請するものですので、終了報告の手続(家庭裁判所に提出する書類の作成)等も含めて、分からないことがあれば裁判手続と登記手続の専門家である司法書士にご相談ください。

なお、後見開始の審判の取消し(判断能力が回復した場合)により終了した場合は、裁判所の嘱託で登記されます。

後見登記に関するご相談

後見登記を当事者が行う場面は多くありませんし、手続き自体に難しいものはありません。

しかし、親族後見人として何か困った事態に遭遇したときは、登記手続と成年後見の専門家である当事務所にご相談ください。

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